2007年6月25日 (月)

英語の上達(日常編)

英語の上達(研究編)で書いたように、研究に関する英語の技術は、数ヶ月単位でみるみる上達した。それでは、日常の英語のレベルは、留学後、どのくらいの期間で上達するものなのだろうか?

留学する以前は、「1年もアメリカに住んでいれば、日常生活の英語など、自然にぺらぺらになるだろう」というぐらいに考えていたが、全く甘かった。

日常会話やテレビや映画のリスニングは、予想以上に上達が遅かった。ランチタイムやパーティーで、会話を盛り上げることや、電話での受け答えなどは、留学2年目ぐらいまで、全く苦手で、留学前とそう変わらないのではないかと思うほどだった。テレビや映画のヒアリングも、意外に上達しない。2年目までは、ほとんど上達が実感できなかった。

私の場合、これらについて上達が実感できたのは、3年目に入ってからである。

こういった、一般の日常の会話などは、30歳を超えて留学しても、そうそう簡単には上達しないようだ。

1)パーティーなどでの日常の会話に関して

研究の英語と言うのは、使う単語や表現のパターンのバリエーションがそれほど多くないので上達が早い。それに比べて、一般会話というのは、単語のバリエーションが多い上に、外国人相手でなく、ネイティブ同士のコミニュケーションに割って入らなければならないようなことが多く、そう簡単にはいかないのだろう。これも、上達させるためには、場数で勝負していくしかない。

1年、2年目では、英語でのパーティーや食事での会話は、相当なストレスだったが、3年を過ぎる頃には、なんとか、会話をもたせることがきるようになってきた。ストレスを感じても、食事などの機会があれば、参加することを避けないように努力してきた成果だと思う。

もし、外国人とのパーティーを避ける生活を続けてきたとしたら、たとえ、5年間アメリカで仕事をしていても、パーティーなどでの日常会話は全く上達しなかったのではないかと感じる。

いずれにしても、研究の英語と違って、日常の英会話というのは、半年や1年でそうそう上達するという類のものではないようだ。

パーディーなどで場を盛り上げるコツとして、だんだんわかってきたことは、聞き役に回るよりも、話し役に回ったほうが会話に参加しやすいということだ。

聞き役に回った場合、自分のあまり得意でないジャンルの話題をされると、その会話についていくのは非常に難しいが、自分が話し役として積極的に話してゆけば、自分の得意な話題で会話を進めることができ、英語力がそれほど高くなくても、その場を盛り上げることができる。

2)テレビや映画のヒアリングについて

テレビや映画のヒアリングも、上達は遅く、3年半たった今でも、すらすらわかるというレベルではない。ありがたいことに、アメリカのテレビでは、聴力障害者のために、ほとんどすべての番組で英語字幕が出る。3年半たった今でも、この字幕を見ながら一生懸命聞いて、やっとなんとか意味が理解できる程度である。

日本語であれば、他のことをしながらテレビを聞き流していても、内容を理解できるものだが、英語の番組となると、一生懸命、集中して聴いてやっと7割ぐらい理解できるレベルである。

よく、映画の字幕なしで、内容が理解できるかどうかが、英語の上達の指標にあげられるが、本当にそれができる人は、相当なレベルに達した人たちなのだと思う。

30歳を超えて、3,4年留学したぐらいでは、そのレベルには、なかなか達するものではないらしい。

もちろん、これも映画の内容によるのだが、アクション映画や漫画であれば、初めの3ヶ月ぐらいで結構、わかるようになるし、裁判系の映画などは、未だにほとんどわからない。

逆に、バイオ系や医療系の自分の仕事に比較的近い内容の映画であれば、かなり理解できるので、これも、映画のジャンルにごとに特別なトレーニングをすれば、上達していくのかもしれない。

勉強法としては、テレビで流れる英語字幕を活用することがお勧めである。耳では全く聞き取れなかったフレーズも、視覚的に見れば、知っているフレーズであることも多い。英語字幕と発音を一致させながらヒアリングを続けることで、英語の耳を上達させるよいトレーニングになる。

映画やテレビが難しいのに対して、ラジオの英語は、聞き取りやすい。やはり、音声でしか情報が伝わらないので、放送するアナウンサーも、テレビのニュースなどとは違って、はっきりした発音をしているからなのだろう。

リスニングの自信をつけるためにも、FMなどを聞くことはお勧めである。

ボストンではFM106.7というラジオ局が若い人に人気があり、研究室でもよく流れている。時折流れる、ヘッドラインニュースをはじめ、渋滞情報、天気予報、CMさえも、耳を英語に慣らすトレーニングになる。

3)英字新聞について

アメリカの主要都市、ボストンをはじめ、NY、サンフランシスコなどでは、メトロ社の発行する無料の新聞「Metro」が毎朝、地下鉄の駅などで配られる。

これを、毎日、ランチの時間に読み始めたのだが、初めの頃は、驚くほど、読めなかった。

研究者は学生の頃から、かなりの量の英語論文を読む必要があり、私も十数年間、毎日、何時間も英語論文を読んできたので、英語の論文を読むことに関しては自信があった。しかし、新聞となると全く勝手が違うことに初めて気づいた。

科学論文と新聞などの一般英語では使われる単語セットが、かなり違う。

例えば、新聞で毎日のように出てくる事件の「容疑者」という意味の”suspect”という単語を私は知らなかった。新聞では頻出の単語だが、科学論文では十数年間の研究生活のなかで見たことがない単語だった。

勉強法としては、新聞を見ながら電子辞書でわからない単語を、いちいち調べていくという、まめな作業を続けていくのが良かったのだと思う。頻出の単語から順に、自然に覚えていくことができる。そうしているうちに、3ヶ月ほどで、だいたい、わかるようになってきた。

効果があったと思う方法としては、まず、インターネットでヤフーなどの日本語のニュースを読んで、その日の大体の記事の内容を掴んでおき、それを知ってから、英語新聞を読むという方法だ。

そうすることで、知らない単語でも、これは多分こういう意味なのだろうと、類推することができ、辞書を引く回数をかなり減らすことができた。こうすることで、読むときのストレスがかなり軽減された。英語の練習というのは、ピアノやギターなどの楽器練習と同じで、毎日、少しづつでも続けることが大事なのだと思う。そういう点で、毎日発行される無料新聞をなるべくストレスが少ない方法で読み続けるということがよいのではないかと思う。

その他の英語のリーディング勉強法としては、「英語の雑誌を読むこと」である。アメリカの本屋に行くと雑誌のコーナーには、日本の2倍ほどはあろうかという数の雑誌がある。日本よりも趣味が多様だし、英語圏の人口は日本人の数倍はいるので、購買者の絶対数も格段に多く、多種類の雑誌が発行されているのだろう。これらの中から、自分の趣味に近いものを定期的に買って読むのも、ひとつの勉強法である。

自分の興味のあることであれば、英語の上達も早いし、そもそも、内容もよく知っているので、理解が早く、「英語を読める」という自信がつく。

例えば、私の場合、コンピュータ関係の本であれば、日本の雑誌との共通の話題も多く、新製品の話題や、マシンのスペックなどは、ほとんど、日本の雑誌と同じなので、読むことにストレスを感じなかった。こうやって自分の趣味のジャンルから、英語を広げていくというのも一つの勉強法だろう。

今思えば、テレビのヒアリングや、英字新聞のリーディングの練習などは、日本にいるときにでも十分に練習できたことではないかと思う。アメリカに来ると、いやおうなしに、勉強せざるをえない状況になるので、モチベーションも上がるが、日本に住んでいてもモチベーションが高いひとには、リーディングとヒアリングの勉強に時間を割くことをお勧めする。

2007年4月 9日 (月)

英語の上達(研究編)

留学後、どのくらいの期間で英語が上達するのか?

渡米したばかりの人たちによく聞かれる質問であるが、私の体験をもとに、留学後の上達の過程と、上達の仕組み、日本にいる時にどういった勉強をすべきだったかを考えてみたい。

留学する前は、「アメリカに住んでいれば、自然に英語も上達するだろう」ぐらいに軽く考えていた。日本では、英会話のNova3ヶ月ほど通ったが、あまり上達した感触はなかった。個人的に思うのは、英会話学校に数ヶ月行くぐらいの練習量などは、留学してしまえば、数週間のうちに経験してしまうということだ。

Novaでの経験は、英語の勉強よりは、そこで出会った人たちとのコミニュケーション、異業種交流という意味では、非常に有意義だった。)

留学前に日本で英語を勉強するなら、会話(聞く話す)でなく、読み書きや、発表の技術などに時間を費やすべきだったと感じている。読み書きや、発表に関しては、日本で勉強しようと、留学先で勉強しようと、似たようなレベルのエネルギーが必要だが、聞くことと話すことに関しては、留学先では、はるかに少ない労力、費用で上達する。

初めの2週間は、驚くほど英語が通じなかった。留学前の私の英語経験は、1度海外の学会に参加したことがある程度。英語での発表は、なんとかできるが、会話は初歩的なことだけというレベルだった。初めの2週間は、研究テーマに関しての議論や、実験の手法やラボの仕組みを教えてもらうのに、お互いの意思が通じなくて相当なストレスを感じた。その理由を今、思い返してみると以下のようなる。

1)自分の発音が悪いので通じない。例えば、試験管を3つ欲しい(three tubes)と言ってもThの発音ができていないので、カタカナで「スリー」と言ってしまい、これが全く通じない。この場合、指を3本立てるなど、ゼスチャーを駆使したり、とにかく紙とペンを持って歩き、文章や絵を描きまくることで、なんとか乗り切った。そのうちゆっくりでいいので、Ths、zの違い、gとzの違い、lとrの違い(これは未だに難しいが)を意識して発音するようにすると、結構、通じるようになってきた。

2)相手の発音が聞き取れない。文章を見れば知っているフレーズでも、早く言われたり、正しい発音で言われたりすると、こちらはカタカナで覚えているので認識できない。

3)かなり高頻度で使うフレーズでも日本では習わないので知らない。例えば、「これで終わり!」という意味の「That’s it.」など、日常生活で多用されるにもかかわらず、日本の英語教育ではあまり習わない(または単に自分が知らない)フレーズが結構ある。これらのフレーズを覚えるだけでも、かなりコミュニケーションができるようになってくる。

これらの初歩的なことは、1ヶ月ぐらいもすると、自然に身についてくる。そういう意味では、1ヶ月でも海外留学を経験するとしないとでは、後々、研究者として外国人と共同研究など交流をもつときに大きな違いがでてくると思う。今更ながら、学生など時間のあるときに、夏休みなどを利用して、ただ働きでいいから海外のラボに入れてもらい、英語漬けで生活するという経験をしていれば、この初めの導入もかなりスムーズに行ったと思う。また、そういう経験があれば、ラボ選びの面接を受ける際にも、選択の幅が広がったと感じる。

初めの3ヶ月間は、相当なスピードで英語力が上達した3ヶ月間、毎日、英語ばかりつかっていると、たいていの頻出フレーズ、単語、その発音を耳と口が覚えていく。この間は日々、自分の英語の上達が実感できた。初めの3ヶ月で研究に関する会話、例えば教授との研究に関する議論や、同僚との実験に関する意思伝達に関しては、流暢ではないが、意思疎通に問題はなくなった。

しかし、3ヶ月以降は案外、上達した感覚がない。この後は、急激な進歩は見られず、じわじわとゆっくり上達してくるようだ。1年たった頃でも、過去形や複数形などの文法はあまり気にせずに話していたし、ラボミーティングで白熱した議論になってくると、全く聞き取れていないことも多かった。このまま、もう上達しないのではないかと不安に思ったものだ。次に上達が感じられるのは、2年後ぐらいで、この頃になると、3ヶ月目のように、めちゃくちゃな英語でとにかく意思を通じさせるのでなく、文法的に正しいかとか、より適切な単語はどれかとか選ぶ余裕がでてきた。脳がいきなり英語にさらされて、その記憶が定着していくのに2年ぐらいはかかるのだろう。

長くアメリカで仕事をしている人たちの話を聞くと、渡米後、5年間ぐらいは英語が上達し続けるそうである。しかし、その後は特別な努力をしない限り、マックスに達してしまいなかなか上達しないらしい。私は今年で4年目になるが、未だに日常生活を送っているだけで、少しづつではあるが、上達していることを感じる。

結論を言うと、研究の英会話の上達関して、

1ヶ月もいれば、研究に関して全く意思が通じないというレベルを脱することができる。

3ヶ月もいれば、とにかく意思を伝達させるだけなら問題はなくなる。

2年いれば、ある程度適切な英語で意思疎通ができるようになる。

5年いれば、英語に関するひととおりのことはマックスに達する(予想)。

以上、私の経験であるが、もちろん、個人差は多大である。特に大きな違いがあるのは、

1)留学するときの年齢。もちろん若い方がいい。私は30代前半でポスドク留学しているが、20代後半で博士課程留学しているひとたちなどは、格段に上達が早くかつ、マックスに達するレベルが高いと感じる。さらに20歳前後で学部生で留学している人は、大学院やポスドク留学している人たちとは、全く違う次元のレベルに達しているようで、状況によっては英語のほうが快適だというレベルに達しているようなひともみかける。逆に40歳前後で渡米した人たちは、一般に上達が遅い人が多いように思う。

2)社交的な性格のひとは、別格。社交性によっても、全く上達が違うようだ。特に話す能力は、個人差が大きい。聞く能力は、比較的滞在年数に比例することが多いが、話すほうは、そうでもなく、日本語を話す能力にかなり相関しているように思う。日本語でもおしゃべりな人は、英語でもだまっていられないらしく、はじめから、めちゃくちゃな英語でも喋りまくる。そのうち正しい英語も覚えてくるので結局、速いスピードで上達するようだ。

3)立場の変化。私の場合、3年目に新しいメンバーを指導する立場になった。いやでも、人とかかわっていかなくてはならなくなり、はじめはかなりのストレスだったが、この頃から急激に会話が上達したように思う。職場での指導的なポジションや会の幹事など、ストレスでもなるべく多く引き受けることで、格段に英語力が上達する可能性がある。

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