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2007年5月26日 (土)

ノーベル賞とネイチャー級の研究との距離

ボストン・レッドソックスでは、この春、松坂が大活躍しているが、彼が世界のスーパースターになるまでには、どれほどの難関をくぐってきたことだろう。

まずは、小学生リーグで頭角を現し、中学で天才と騒がれ、野球部の有名な高校に入学する。高校野球で甲子園に出れば、地元ではちょっとした有名人になるが、そんな球児は全国に何千人とおり、そこからプロになることができるのは、ほんの一握りである。それだけの競争を勝ち抜いて、やっとプロになれたとしても、こうやってアメリカメジャーリーグで活躍できる選手になれるのは、さらに何百人に一人だろう。

プロ野球選手にあこがれる小学生の中から、実際に世界のスーパースターになれるのは、数百万人に一人ぐらいのものだろう。

科学の世界で、スーパースターといえば、真っ先に思いつくのは、「ノーベル賞受賞者」だ。日本人の受賞者は、この100年間で9人しかいない。

(湯川秀樹, 朝永振一郎, 江崎玲於奈 ,福井謙一 ,利根川進 ,白川英樹 ,野依良治 ,小柴昌俊, 田中耕一 

ノーベル賞は、科学の大発見に対して与えられるのだが、その多くは、ネイチャー級の一流雑誌に掲載された研究である。

(ノーベル賞を受賞する研究の中には、発表当時は先端的すぎて、一流雑誌に掲載されなかったものもしばしばあるのだが。)

このブロクの第一話で、「ネイチャーに論文を載せることは研究者の夢だ」と書いた。

では、ネイチャー級の論文の中でどのくらいにひとつの研究がノーベル賞を取りうるのだろうか?

まず、研究の全体から考えると、インパクトファクターを算出する会社、トムソン社の統計によると、世界中で1年間に発表される自然科学系の論文は約100万報もある。

これに対し、ネイチャーに掲載される論文は、年に約1000報。ネイチャーと並ぶ有名雑誌、science誌やcell誌、その姉妹誌などを含めると、2、3千報ぐらいが「一流の研究」ということになるだろう。ネイチャー級の論文になるのは、一般に行われている科学研究の300から500に1つの大発見ということになる。

科学分野のノーベル賞は、毎年、物理、化学、医学の3ジャンルからそれぞれ、1から3人づつが選ばれるので、年間、3から9人の科学者が受賞することになる。普通、ノーベル賞を受賞するのは数個の主要な論文に対してであるが、その中に1つはネイチャー級の論文が含まれるとすると、大雑把に言えば、ネイチャー級の論文の中で、更に、300から1000にひとつの、超大発見だけが、ノーベル賞を受賞するという計算になる

ハーバードで研究していても、ネイチャー級の論文を書いた研究者が回りにごろごろいるというわけではない。ネイチャー級の論文を書いた研究者は大抵、その学科では有名人である。ノーベル賞というのは、そんな各分野で超一流の研究者を世界中から数百人集めて、その中ではじめて一人が受賞するというレベルの代物なのだ。

野球の世界に例えて言うなら、普通の論文を書いている研究者が甲子園に出場経験のある選手(日本で数万人)とすれば、ネイチャー級の研究を成し遂げた研究者が、日本のプロ野球で活躍する選手(日本で数百人)。そして、ノーベル賞受賞者は、メジャーリーグでも有名になっている松坂やイチロー級の選手(日本人で数人)ということになるだろうか。

ちなみに、ハーバード大学出身のノーベル賞受賞者は37人だそうだ。ひとつの大学で日本全体の4倍の人数である。

余談になるが、私も実際に、身近で偶然にも、ノーベル賞受賞者のひとりに知り合う機会があった。何度かご自宅にお邪魔したのだが、印象的だったのは、奥様が我々の会話の相手をされている間に、ノーベル賞受賞者の先生自らが、食器を下げて洗いものをされておられたことだった。偉大な業績を残されてなお、家事の手伝いを自然に行っている姿に感銘を受け、私もできるかぎり家事を手伝うことに決めた。

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