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2007年3月 2日 (金)

アメリカの研究を支えるのは外国人

意外なことだが、アメリカのラボでは、アメリカ人は少なく、外国人が多い。

私は、アメリカのラボに来たのだから、当然、アメリカ人の研究者が多いのだろうと思っていたが、周囲のラボのメンバーを見渡すと、中国人が半分、残りの半分をロシア人とインド人、中国以外のアジア人で三等分したような人口構成である。アメリカで生まれ育って、アメリカの大学を出たという研究者は滅多にお目にかかれない。

何人かの他のアメリカの大学に留学している友人に聞いたところ、この現象は、ハーバードだけでなく、アメリカでは一般的なことらしい。

そして、それはバイオに限らず、情報系、機械系でも同様だと言う。

聞くところによると、アメリカのアカデミックにおける理系研究者の90%がアメリカ人でない外国人であるそうだ。

これはいったいどうしたことか?

アメリカの産業を支えている理系の研究。

その根底である大学研究機関がアメリカ人以外の外国人によって支えられているとは。

ラボにいる数少ないアメリカ人にそのことを聞いてみた。

こんな答えが返ってきた。

アメリカでは、職業を選ぶときにまず、「給料」だという。

まず、学生に一番人気は、弁護士、金融系などの文系の職業。こういった職業は、上は数億円の給料が望める。まさに、ミリオネア(億万長者)になれる可能性がある職業である。

理系なら臨床医。アメリカでは、日本と違い、医者の給料は高く、勤務医でも平均2000万円から4000万円程度の給料が与えられる。

だから、アメリカの勉強ができる若者は、大学を出たら多少の社会経験を積んだ後、ロースクールか、メディカルスクール、ビジネススクールに通う。そして、臨床医、弁護士、コンサルタントや金融系などの高給の望める専門職を目指す。それが王道であるそうだ。

万一、どうしても理系の実験が好きで、博士課程に行くことを選んだ場合も、博士修得後は、そこそこ給料の高い、製薬企業を目指すか、または、バイオベンチャーを自分で造ることを目指すということだった。製薬企業に行けば、若くても、博士であれば、いきなり1000万円ぐらいの給料を得られるし、バイオベンチャーは当たれば、ミリオネアになれる。

そういわれれば、アメリカのテレビ番組では、「億万長者」を意識した番組が人気である。「ミリオネア」という番組は私も良く見ているのだが、素人の番組出演者が夢を語り、最高、1億円をその場で手にするといいうエンターテイメント番組である。

もうひとつの億万長者系人気番組は、「アパレンタス」。大富豪であるトランプ氏が、ビジネススクールなどを出たエリートの若者に、ビジネスプランを実行させるという番組である。優勝者は、トランプ氏率いる財閥の幹部としての道が開けるというもの。これらの番組は、日本人からみればお金が前面に出すぎていて、少しいやらしいとさえ感じるが、アメリカでは人気を博している。この国でのお金持ちの意味合いは日本とは少し違ったところがあるのかもしれない。

彼らにとって大学などのアカデミックの職とは、薄給の博士課程(年収200万円程度で5,6年年)、ポスドク(年収400万円程度で3から5年以上)と10年あまりの経済的に恵まれない時代を過ごした後、やっと助手になっても、年収800万円程度からスタートと、全く労力に見合わない職なのだろう。ある意味、理にかなった選択のようだ。

では、日本の学生は、どういった仕事を目指すのか?「理系離れ」が問題になりつつも、アメリカほど極端ではないだろう。「給料の額は全く気にしていない」という人は少ないとしても、ある程度、「金より名誉」、「武士は食わねど高楊枝」というところが文化的にあるのではないか。「末は博士か大臣か」と、日本では「大臣」と並べられるほどに(?)、「博士」に価値があるとさえ言われるのだから。

日本では、大学教授への道は、公務員と同様に、勉強のできる学生にとって、ある程度、人気の職業である。医師にしても、開業医でない限りはアメリカほど高給が期待できない上に重労働を強いられるが、日本でも人気の職業で、医学部はいつの時代も難関である。

他の国ではどうかと、中国人や、ヨーロッパから来た研究者に話を聞いたところ、これらの国でもアメリカと違い、日本と似たような価値観があるという。これらの歴史ある国では、著名な学者は、貧乏でも尊敬されてきたし、実際、多くの社会貢献をしてきていることが、自然に若者の進路に影響するということだろうか。

しかし、アメリカの産業の根底を支えている理系研究職が、アメリカ人に敬遠されているというのは、この先数十年を考えるとまずいのではないか?

中国やインドが経済力をつけてきて、それらの国から来ている研究者たちが国に帰ってしまったら、アメリカの研究機関は空洞化してしまうのではないか。

これは、日本についても言えると思う。日本でも近年、「理系離れ」が問題になっているが、優秀な人材が理系研究者の職業を避けるようになると、「科学技術立国、日本」は、アメリカ以上に危なくなってくるのではないか。現状では、日本には、アメリカのように優秀な外国人研究者が大量にやって来てくれることは期待できない。この、アメリカの研究者の人口構成の状況には、日本の科学研究の将来を考えさせられた。

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